全4回のシリーズ「自分を守るためのバウンダリー入門」の最終回です。
このシリーズを通して、
【第1回】で、自分を縛る「バウンダ-リー」の不在に気づき、
【第2回】で、勇気を出して「NO」と伝える言葉を学び、
【第3回】で、人の顔色に振り回されない「自分軸」を育てました。
もうあなたは、以前のように、理不尽な頼みごとに心をすり減らしたり、他人の機嫌に一喜一憂したりすることは、格段に少なくなっているのではないでしょうか。
「いい人」を卒業したあなたが、これから築いていく人間関係は、これまでとは少し違う、新しい景色のはずです。
最終回となる今回は、
これから出会う人々や、本当に大切にしたい人々と、
どうすれば温かく、健全な人間関係を築いていけるのか。
そのための、最後のレッスンです。
この記事を読み終える頃には、あなたは「いい人」であることよりも、ずっと素敵で、幸せな関係性の築き方を知っているはずです。
「いい人」をやめた後に起こる、人間関係の“正直な変化”
まず、心構えとして知っておいてほしいことがあります。
あなたがバウンダリーを引き始めると、人間関係には、正直で、時には少しだけ胸が痛むような「変化」が訪れます。
① 静かに去っていく人、そして、深く繋がれる人
これまでのあなたが「無理な頼み」や「愚痴」をすべて受け入れてくれる存在だったとしたら、残念ながら、あなたの変化を快く思わない人もいるでしょう。
あなたの優しさに一方的に依存していた人は、静かに去っていくかもしれません。
最初は、寂しさや罪悪感を感じるかもしれません。
私にも、いつも愚痴ばかり話していた友人が、私が自分の意見を言うようになった途端、連絡をくれなくなった経験があります。
正直、とても寂しかったです。
でも、忘れないでください。
それは、あなたの人生から誰かがいなくなったのではなく、「あなたを大切にしない人が、自然といなくなった」だけ。健全なデトックスなのです。
そして、その空いたスペースには、あなたのバウンダリーを尊重し、ありのままのあなたを大切にしてくれる、本当に素晴らしい人々が、必ず現れます。
② 「対等な関係」への戸惑いと、心からの心地よさ
これまでのあなたは、常に「与える側」「助ける側」だったかもしれません。
しかし、健全なバウンダリーのある関係は、お互いに与え、与えられる「対等な関係」です。
最初は、相手に頼ったり、自分の弱さを見せたりすることに、ソワソワと落ち着かない気持ちになるかもしれません。
しかし、あなたが勇気を出して心を開くことで、相手も心を開いてくれる。
そんな、信頼と尊重に基づいた関係は、あなたがこれまで感じたことのないような、心からの安心感と、温かい心地よさを与えてくれるでしょう。
自分も相手も心地よい。新しい関係を育てる“3つの約束”
では、新しい世界の住人として、どんなコミュニケーションを心がければ良いのでしょうか。
これまでのレッスンの集大成として、3つの具体的な約束をご紹介します。
約束①:「NO」の先にある、最高の「YES」を伝えよう
バウンダリーを学ぶと、私たちは「NO」と言うことに意識が向きがちです。
しかし、本当に大切なのはその先。
あなたが、心から「YES」と感じる時に、その気持ちを惜しみなく、最高の笑顔で表現することです。
以前のあなた
(本当は乗り気じゃないけど…)
「…はい、やります…」(義務感のYES)
今のあなた
(気乗りしないことは断った上で)
「その仕事、すごく面白そう!ぜひ、私にやらせてください!」(心からのYES)
あなたの「YES」が、義務感からではなく、心からの喜びから発せられる時、その言葉には本物のエネルギーが宿ります。
周りの人は、あなたの「YES」を、以前よりもずっと信頼し、喜んでくれるようになるでしょう。
約束②:「お願い上手」になろう。一人で抱え込まない勇気
「いい人」は、人に頼るのが苦手です。
「迷惑をかけたくない」「できない人だと思われたくない」という思いから、何でも一人で抱え込んでしまいます。
しかし、健全な関係は、お互いに助け合うことで深まります。
あなたが心から困っている時、信頼できる相手に「助けてほしい」と伝えることは、「私は、あなたを信頼しています」という、最高のメッセージなのです。
【お願い上手の練習フレーズ】
- 「ごめん、今ちょっと手が足りなくて…。もしよかったら、この部分だけ手伝ってもらえないかな?」
- 「少しだけ、話を聞いてもらってもいい?あなたの意見が聞きたいな」
あなたが誰かを助けるように、あなたも誰かに助けてもらっていい。
その許可を、まず自分自身に出してあげましょう。
約束③:「感謝」と「尊重」を、惜しみなく言葉にしよう
自己犠牲に基づいていた関係ではなく、対等な関係だからこそ、「ありがとう」という言葉の価値が、何倍にも輝きます。
相手が何かをしてくれた時、それがどんなに小さなことであっても、「当たり前」だと思わず、具体的な言葉にして感謝を伝えましょう。
【感謝と尊重の練習フレーズ】
- 「さっきは話を聞いてくれて、本当にありがとう。すごく心が軽くなったよ」
- 「〇〇さんが手伝ってくれたおかげで、無事に間に合いました。さすがだね!本当に助かりました」
そして、相手があなたのお願いを断った時も、「そっか、忙しいのに無理言ってごめんね。
教えてくれてありがとう」と、相手のバウンダリーを尊重する言葉を忘れないように。
その誠実な姿勢が、お互いの信頼をさらに深めていきます。
卒業のあなたへ。本当の優しさとは
全4回にわたる「いい人」を卒業するための旅、本当にお疲れ様でした。
「いい人」をやめることは、決して「優しさを捨てる」ことではありません。
それは、これまで外側にばかり向けていた優しさのベクトルを、まず、何よりも先に、自分自身へと向けてあげること。
そして、自分というコップが心からの優しさと自己肯定感で満たされた時、その溢れた分で、周りの人を本当に大切にしていく、ということなのです。
自分の感情を大切にし、 罪悪感なく「NO」を伝え、 相手の課題と自分の課題を切り離し、 そして、本当に大切にしたい人とは、心からの「YES」と「感謝」で繋がっていく。
これが、あなたが手に入れた、新しい人間関係の築き方です。
あなたはもう、誰かの評価に振り回される、物語の脇役ではありません。 あなた自身の人生の、誇り高き主人公です。
「いい人」卒業、本当におめでとうございます。 ようこそ、あなたの、本当の人生へ!
【全4回】連載記事まとめ
この旅にご参加いただき、本当にありがとうございました。
いつでもこの場所に戻ってこれるように、全4回の連載記事をまとめました。あなたの人生の“お守り”として、これからもご活用ください。
- 第1回:【現状を知る】 なぜかいつも損な役回り?「いい人」をやめて、自分を大切にする方法
- 第2回:【断る練習】 頼まれごとを断れないあなたへ。罪悪感なく「NO」と言う練習帳
- 第3回:【心を守る】 他人の機嫌に振り回されて疲れる…。自分を守る「心の境界線」を引いて、穏やかな毎日を取り戻す方法
- 第4回:【新しい関係を築く】「いい人」卒業おめでとう!自分を大切にしながら、温かい人間関係を築くための最終レッスン (←イマココ)


