「ごめん、これお願いできるかな?」
本当は自分の仕事で手一杯なのに、相手の困った顔を見ると、つい笑顔で「いいですよ」と引き受けてしまう。
本当は疲れているから、今日はまっすぐ家に帰りたいのに、「この後、少しだけどう?」という誘いを断れず、無理に付き合ってしまう。
そして、一日の終わりに一人になった時、どっと疲れが押し寄せる。
「どうして、私ばっかりこんな役回りなんだろう…」
「あの時、勇気を出して断ればよかった…」
そんな後悔と自己嫌悪で、心が重くなっていませんか?
もし、この言葉に胸がチクリと痛んだなら、それはあなたが「意志が弱い」からでも、「能力が低い」からでも、決してありません。
むしろ、あなたはきっと、相手の気持ちを敏感に察することができる、心優しく、責任感の強い方なのだと思います。
だからこそ、周りをがっかりさせたくない、場の空気を壊したくないという思いから、無意識のうちに「いい人」を演じ、自分の気持ちや都合を、いつも後回しにしてしまうのです。
この新しいシリーズ
自分を守るためのバウンダリー(境界線)入門
そんなあなたがこれ以上心をすり減らすことなく、罪悪感なく自分を大切にするための、具体的で実践的な方法をお伝えしていきます。
記念すべき第1回のテーマは、「現状を知る」こと。
この記事を読み終える頃には、あなたがなぜいつも「損な役回り」を引き受けてしまうのか、その根本的な原因がわかり、そこから抜け出すための最初の、そして最も重要な一歩を踏み出せているはずです。
もう自分を責めないで。「いい人」を頑張りすぎてしまう“3つの心の癖”
「断ればいいだけ」と頭ではわかっていても、いざとなるとできない。
その背景には、私たちの心の中に潜む、いくつかの共通した「思い込み」や「恐れ」があります。まずは、その正体を優しく見つめてみましょう。
理由①:「NO」と言ったら、嫌われてしまうという恐れ
私たちの心の奥底には、「人から嫌われたくない」「孤独になりたくない」という、本能的な欲求があります。
そのため、「頼みを断る=相手を拒絶すること=相手から嫌われて、一人ぼっちになってしまうこと」という恐怖の方程式が無意識に成り立ち、「NO」と言うことに強いブレーキがかかるのです。
相手をがっかりさせるくらいなら、自分が少し我慢すればいい。
そうやって、人間関係が壊れるという最大のリスクを、必死で避けようとしています。
理由②:「役に立たない自分には、価値がない」という思い込み
「誰かの役に立つこと」で、自分の存在価値を感じる。
これは、とても素晴らしいことです。
しかし、その思いが強くなりすぎると、「頼まれごとを引き受けて、感謝される自分」にしか価値を見出せなくなってしまいます。
すると、頼まれごとは「自分の価値を証明するためのチャンス」となり、どんなに無理な要求でも、必死で応えようとしてしまうのです。
「何もしていない、ありのままの自分」でいることに、耐えられないのかもしれません。
理由③:相手の感情まで「自分の責任」だと感じてしまう
「私が断ったら、あの人はがっかりするだろうな…」
「私が本当のことを言ったら、場の空気が悪くなるかもしれない…」
心優しいあなたほど、相手が感じるであろうネガティブな感情まで、まるで自分のせいであるかのように感じ、一人で背負い込んでしまいます。
相手の機嫌を損ねないように、がっかりさせないようにと、常に気を配り、先回りして行動する。
いつの間にか、他人の感情のケアまでが自分の役割となり、心は常に緊張状態で、疲れ果ててしまうのです。
自分を大切にする鍵。「バウンダリー」という心の境界線
これらの根本原因から抜け出し、自分を大切にするための鍵となるのが、今回のシリーズのテーマである「バウンダリー(境界線)」という考え方です。
バウンダリーとは、「自分と他人とを区別する、目に見えない心の境界線」のこと。
「ここまでは私の責任で、ここからはあなたの責任ですよ」と、お互いの領域を明確にする、大切なラインです。
バウンダリーは「冷たい壁」ではなく「温かいドア」
「境界線」と聞くと、なんだか人間関係を遮断するような、冷たくて硬い「壁」をイメージするかもしれません。
しかし、健全なバウンダリーは、壁ではなく温かみのある「快適なドア」のようなものです。
壁は、誰も中に入れることができません。
しかし、ドアなら、あなたが「どうぞ」と招き入れたい人を、心地よいタイミングで中に入れることができます。
そして、少し休みたい時には、静かにドアを閉めて、「今は一人の時間を大切にします」と自分の心を守ることもできるのです。
バウンダリーとは、人間関係の主導権を他人に明け渡すのではなく、自分自身でコントロールするための、しなやかで温かいツールなのです。
【30秒で診断】あなたのバウンダリータイプは?心のドアの状態をチェック
では、あなたの今の「心のドア」は、どんな状態でしょうか?
簡単なタイプ診断で、まずは自分の「現在地」を知ることから始めましょう。
タイプ①:ドアがない、あるいは常に全開の「スポンジ」タイプ
口ぐせ
「いいよ、やっとくよ」
「私さえ我慢すれば…」
特徴
頼まれごとを、ほとんど断れない。
他人の愚痴やネガティブな感情に、自分のことのように影響されて疲弊する。
一人でいる時も、つい相手のことが気になってしまう。
心の状態
自分と他人との境界線が曖昧で、あらゆるものを吸収してしまいます。
優しくて共感性が高い反面、最も心をすり減らしやすい状態です。
タイプ②:鍵をかけたまま開かない「要塞」タイプ
口ぐせ
「大丈夫、一人でできるから」
「どうせ誰もわかってくれない」
特徴
人に頼ったり、弱みを見せたりするのが極端に苦手。
「迷惑をかけたくない」という思いが強い。
人と深く関わることを、無意識に避けている。
心の状態
過去の経験から傷つくことを恐れるあまり、心のドアに頑丈な鍵をかけ、誰をも近づけないようにしています。
自分を守ることはできますが、孤独を感じやすく、温かい繋がりを得にくいかもしれません。
タイプ③:自分で開閉できる「理想の家」タイプ
口ぐせ
「それは嬉しい、ぜひ!」
「ごめん、今は難しいかな」
特徴
自分の状況に合わせて、頼み事を引き受けたり、断ったりできる。
相手の気持ちに共感しつつも、引きずられすぎない。
一人の時間も、人と過ごす時間も、両方を楽しめる。
心の状態
これが、私たちが目指す、健全なバウンダリーが確立された状態です。
相手を尊重しながら、自分も大切にできる、理想的な心の家です。
まとめ:あなたは、あなたの人生の“最優先”でいい
今回は、「いい人」をやめて自分を大切にするための、旅の始まりとして、「なぜ、私たちは損な役回りを引き受けてしまうのか」という根本原因と、「バウンダリー」という新しい概念についてお伝えしました。
あなたがどのタイプだったとしても、どうか自分を責めないでくださいね。
「スポンジ」タイプだったあなたは、それだけ人の気持ちに寄り添える、海のように深い優しさを持っています。
「要塞」タイプだったあなたは、それだけ懸命に、自分の繊細な心を守り抜いてきたということです。
大切なのは、まず「今の自分の状態」に、ただ気づいてあげること。
「ああ、私は今まで、心のドアを開けっ放しにして、誰でも土足で入れるようにしていたんだな」 そう気づくことこそが、自分を大切にするための、最も重要で、最も勇気ある第一歩です。
あなたは、誰かの期待に応えるためだけに、この世に生まれてきたのではありません。
あなたの時間、エネルギー、そしてその優しい心は、何よりもあなた自身が、大切に守り育んでいくべき、尊い宝物なのですから。
【次回予告】罪悪感なく「NO」と言うための具体的な言葉が見つかる
さて、今回の記事で、あなたは自分のバウンダリーの「現在地」を知ることができました。
では、これからどうやって、心のドアの「取っ手」を自分の手に取り戻していけば良いのでしょうか?
次回の第2回【断る練習】では、バウンダリーを築く上での最初の関門である、「NO」と伝えることに焦点を当てます。
罪悪感や不安を最小限にして、相手も自分も大切にする、具体的な「断り方の言葉のテンプレート」を多数ご紹介します。ぜひ、次回の更新も楽しみにお待ちください。
【全4回】もう「いい人」でいなくても大丈夫。自分を守るためのバウンダリー(境界線)入門 🛡️
- 第1回:【現状を知る】 なぜかいつも損な役回り?「いい人」をやめて、自分を大切にする方法 (←イマココ)
- 第2回:【断る練習】 頼まれごとを断れないあなたへ。罪悪感なく「NO」と言う練習帳
- 第3回:【心を守る】 人の顔色をうかがうのをやめたい!自分らしく輝くための「心のバリア」の作り方
- 第4回:【新しい関係を築く】「いい人」を卒業しよう。健全な人間関係を築くためのバウンダリーレッスン
関連記事【境界線の引き方】一覧
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