「どうせ、私なんて…」
新しいことに挑戦しようとした時、誰かに褒められた時。
まるで自分を守るためのお守りのように、この言葉を心の中で唱えていませんか?
その気持ち、よくわかります。
第1回では心をほぐすウォームアップを、第2回では「被害者意識」という重たいコートを脱ぐ練習をしてきました。
今回は、さらに一歩進んで、日常に染みついてしまった
具体的なトレーニングです。
あなたはきっと、真面目で、物事に一生懸命な方なのでしょう。
だからこそ、自分の至らないところにばかり目が向いてしまうのかもしれません。
この記事を読み終える頃には、「自分を責める声」との上手な付き合い方がわかり、あなたの心が少しだけ軽くなっているはずです。
なぜ私たちは「完璧な自分」という幻を追い求めてしまうのか?
自己否定のループから抜け出すために、まずはその正体を少しだけ知っておきましょう。
それはあなたの性格が悪いのではなく、知らず知らずのうちに身につけてしまった、いくつかの「心の習慣」が原因です。
100点以外は0点?「減点方式」の思考グセ
自分の中に「こうあるべき」という厳しいルールはありませんか?
100点満点の完璧な自分でなければ価値がない、と無意識に思い込んでいるのかもしれません。
しかし、完璧な人間などどこにも存在しません。
この高すぎる理想が、今の自分を否定する原因になってしまうのです。
過去にかけられた「呪いの言葉」
「もっと頑張りなさい」
「なんでそんなこともできないの?」
もしかしたら、子どもの頃に信頼する大人からかけられた言葉が、心の奥深くで「呪いの言葉」のようにあなたを縛り付けている可能性もあります。
そして大人になった今も、「自分はまだまだ足りない」と感じさせてしまうのです。
自己否定の呪いを解く、3つのアプローチ
ここからは、その呪いを解き、心を少しずつ温めていくための具体的なトレーニングをご紹介します。
どれも、今日からすぐに始められる優しい方法です。
アプローチ①【視点を変える】:できていない事探しをやめ、「できた事」を数える
自己否定のクセがある時、私たちの心は「できていないこと」を探す名探偵になっています。
タスクが10個中8個できていても、できなかった2個のことばかり考えてしまうのです。
今日から、「できた事」を探す名探偵に転職してみましょう。
脳は、意識を向けたものを探し出す性質があります。「できた事」に意識を向けるだけで、世界の見え方は驚くほど変わります。
<今日の「できた事」リスト>
- 朝、時間通りに起きられた!
- 苦手なAさんに、自分から挨拶できた!
- 夜ごはんを、ちゃんと作った!
どんなに些細なことでも、当たり前のことでも構いません。
「私、ちゃんとやっているじゃないか」と、できた「事実」を一つひとつ、丁寧に認めてあげましょう。
アプローチ②【言葉を変える】:「私なんて…」を「今日の私は…」に上書き保存する
言葉は、私たちの心を形作る、強力なツールです。
「私なんて、どうせできない」という言葉が浮かんだら、それを打ち消す新しい言葉で「上書き保存」する練習をしてみましょう。
古いファイルを新しいファイルで上書きするように、意識的に言葉を選び直すのです。
<言葉の上書き保存トレーニング>
- Before:
「私なんて、この仕事は無理だ…」 - After:
「今日の私は、この仕事に挑戦する!」
- Before:
「私なんて、たいしたことない人間だ…」 - After:
「今日の私は、一日よく頑張った!」
ポイントは、「私はすごい!」といった大きな言葉でなくても良い、ということ。
「今日の私は」と主語を小さくすることで、抵抗なく、自然にポジ-ティブな言葉を受け入れられるようになります。
アプローチ③【距離をとる】:頭の中の「内なる批判家」を客観視する
あなたの頭の中で、常にあなたを責めたり、ダメ出しをしたりしてくる存在。
その声を「内なる批判家」と名付けてみましょう。
そして、その声が聞こえてきたら、ノートに書き出してみてください。
- 「また失敗した。本当にダメだな」
- 「周りの人はもっとできているのに、情けない」
感情を良い悪いで判断せず、ただそのまま書き出します。
そして、書き出した言葉を、まるで他人のセリフのように眺めてみましょう。
すると不思議なことに、「ああ、『内なる批判家』がまた何か言っているな」と、その声と自分自身との間に「距離」が生まれます。
その声と戦う必要はありません。
「そっか、あなたはそう思うんだね。教えてくれてありがとう」と心の中で受け流す。この客観視が、あなたを自己否定の渦から救い出してくれます。
まとめ:あなたのままで、もう十分素晴らしい
今回ご紹介した3つのアプローチは、あなたの心を健康にするための「心の筋トレ」です。
- 【視点を変える】
「できた事」を数える - 【言葉を変える】
「今日の私は…」と上書きする - 【距離を距離をとる】
「内なる批判家」を客観視する
最初からうまくできなくても、全く問題ありません。
大切なのは、「自分を否定しない自分」を目指すのではなく、「否定的な声が聞こえても、それに飲み込まれない自分」になることです。
心が疲れている時は、無理せず休んでくださいね。自分に優しくすることも、立派なトレーニングの一つです。
あなたの心の奥には、たくさんの魅力と可能性が眠っています。そのことを、誰よりもまず、あなた自身が信じてあげてください。
【次回予告】
ここまで読んでくださり、ありがとうございました。
いよいよ次回は最終回。
これまでのトレーニングの集大成として、本当の意味で「ありのままの自分」を受け入れ、愛するための最後のステップについてお話しします。
お楽しみに!