この連載も、いよいよ折り返し地点ですね。
【第1回】では「内観」で自分の心の奥にある根本原因を探り、
【第2回】では「感情ログ」で日々の心の天気を可視化する方法
をお伝えしました。
もしかしたら、あなたは「感情ログ」をつけ始めたことで、「自分はこんな時にイライラしやすいんだな」「不安を感じると、決まって肩が重くなる」といった、自分だけのパターンに気づき始めた頃かもしれません。
パターンに気づけるようになったのは、素晴らしい進歩です。
しかし、同時にこうも感じているのではないでしょうか?
「心が『嵐』だとわかっても、その嵐の中で、一体どうすればいいの?」
「この湧き上がってくるネガティブな感情を、どう扱えばいいんだろう?」
そう、天気がわかっただけでは、まだ不十分。
大切なのは、雨が降ってきた時に「傘をさし、安全な場所で雨宿りする方法」を知っていることです。
今回は、
安全に洗い流すための具体的な実践法、
「感情ジャーナリング」
をご紹介します。
この記事を読み終える頃には、あなたは感情の波に飲み込まれるのではなく、そのエネルギーを上手に受け流すための「心のデトックス術」を身につけているはずです。
感情ジャーナリングとは?感情ログとの決定的な違い
「また書くの?感情ログと何が違うの?」
そう思われたかもしれませんね。
この二つは、目的がまったく異なります。
一言でいうなら、感情ログが「心の天気図」だとすれば、
感情ジャーナリングは「嵐を安全にやり過ごすための避難所(シェルター)」です。
- 感情ログの目的
日々の感情を「定点観測」し、客観的なデータを集めてパターンを把握すること。 - 感情ジャーナリングの目的
今まさに感じている強い感情を「外に吐き出し、浄化(デトックス)する」こと。
心の中に溜まった泥水を、きれいな水と入れ替えるようなイメージで、特に、怒り、不安、悲しみといったネガティブな感情が渦巻いている時に、その絶大な力を発揮します。
なぜ「書く」だけで、心がデトックスされるの?
頭の中でぐるぐると回り続けていた感情を、一度「文字」として外に出すことで、私たちはその感情と心の距離を取ることができます。
それは、散らかった部屋の片づけと似ています。
まずクローゼットの中のものを全部出して床に広げることで、初めて「自分はこんなに沢山のものを持っていたんだ」と客観視でき、いるもの・いらないものを整理できますよね。
「書く」という行為は、心の中のものを一度全部出すことで、冷静なもう一人の自分が「そっか、今こんな気持ちなんだね」と寄り添ってくれる、パワフルな心の整理術なのです。
心のデトックスを始める「感情ジャーナリング」の書き方【3ステップ】
さあ、具体的なやり方を見ていきましょう。
感情ジャーナリングは、決まった型や正解のない、とても自由なものです。
ここでは、初心者の方でも始めやすい、基本的な3つのステップをご紹介します。
ステップ1:【吐き出す】タイマーを5分セット。思考を止め、心を垂れ流す
まずは、心の中に溜まっているものを、残らず吐き出す「デトックスタイム」です。
- ノートとペンを用意します。
(誰にも見せないものなので、裏紙でも構いません) - スマートフォンのタイマーを5分〜10分にセットします。
- タイマーが鳴るまで、頭に浮かんだことをひたすら書き続けます。
ここでのルールは、たった一つ。
「絶対に自分を検閲しないこと」です。
「こんなこと書いちゃダメだ」
「もっと綺麗な字で書かなきゃ」
「文法がおかしいかも」といった“頭の声”は、すべて無視してください。
「あの人のせいで本当にムカつく!」
「もう全部嫌だ!どうして私ばっかり!」
普段は口に出せないような汚い言葉や、支離滅裂な文章で大丈夫。
大切なのは、頭で考えず、心に浮かんだ感情を、指先からダイレクトに紙へと流し出す感覚です。
ステップ2:【客観視する】書き出した文章を「親友からの手紙」として読み返す
感情を吐き出し終えたら、一度深呼吸。
そして、今書きなぐった文章を、「まるで大好きな親友から届いた、悩みの相談の手紙」だと思って、少し距離を置いて読み返してみましょう。
「なるほど、この子は今、こんなことで怒っているんだな」
「こんな言葉を言われて、すごく悲しかったんだね。それは辛いよね」
そうやって他人事として読むことで、感情的になっていた時には見えなかった、自分の本当の気持ちが見えてきます。
私自身、仕事のことでイライラを書き出した後で読み返してみたら、
「ああ、私は怒っていたんじゃなくて、ただ『分かってもらえない』ことが悲しかっただけなんだな」と、
怒りの鎧の下に隠れていた、自分の繊細な本心に気づけた経験があります。
ステップ3:【自分を癒す】今の自分に、一番かけてほしい言葉を贈る
最後に、今のあなたの気持ちに、そっと寄り添うステップです。
ステップ2で客観視した「悩める親友(=あなた自身)」に対して、今のあなたがかけてあげたい優しい言葉を、文章の最後に書き加えてみましょう。
- 「それは怒るのも無理ないよ。あなたはよく頑張ったね。」
- 「不安になるよね。でも、一人じゃないから大丈夫だよ。」
- 「悲しかったね。今日はもう何も考えずに、ゆっくり休もう。」
誰かに言ってもらいたかったその言葉を、世界で一番の味方であるあなた自身が、あなたにかけてあげるのです。
この「自己受容」の言葉で締めくくることで、ジャーナリングは単なる愚痴の吐き出しではなく、パワフルなセルフケアの儀式に変わります。
【感情別】すぐに使えるジャーナリング・テーマ例
「いざ書こうと思っても、何から書けばいいかわからない…」
そんな時のために、感情別に使える「問いかけ」のテーマ例をいくつかご紹介します。
この問いかけを、ジャーナリングの書き出しに使ってみてください。
😡 「イライラ・怒り」で心が燃えている時
- 今、私が本当に「何に」怒っているんだろう?
- その出来事の、何がそんなに許せないと感じる?
- 本当は、相手にどうしてほしかった?どうなりたかった?
😥 「不安・恐れ」で心が凍りついている時
- 今、私が最も恐れている「最悪のシナリオ」って、具体的にどんなこと?
- そのシナリオが、実際に起こる確率は、冷静に考えて何パーセントくらい?
- この不安が、私に「もっと準備して」と伝えようとしているメッセージは何だろう?
😢 「悲しみ・落ち込み」で心が沈んでいる時
- 今、私は何を「失った」と感じて、こんなに悲しいんだろう?
- この悲しみは、体のどのあたりが重い感じがする?
- 今の自分を抱きしめてあげるために、まず何をしてあげられるかな?
まとめ:ネガティブな感情は「デトックスのサイン」
私たちの心に湧き上がる感情は、良いものも悪いものも、すべてが一時的な訪問者のようなものです。
感情ジャーナリングは、
無理に追い返したり、
見ないふりをして閉じ込めたりするのではなく、
「こんにちは。あなたが来た理由はわかりました。
教えてくれてありがとう。どうぞ、お気をつけて」と、
丁寧にお見送りするための作法です。
心に溜まった感情は、便秘と同じ。
我慢せずに、
こまめに外に出してあげることで、
あなたの心はいつも軽やかで、健やかな状態を保つことができます。
ネガティブな感情に襲われた時、それはあなたを苦しめる敵ではありません。
「心のデトックスのチャンスが来た!」
そう思えたら、あなたの人生はもっと生きやすく、しなやかなものに変わっていくはずです。
【連載】自分の「機嫌」の取り方レッスン
▶︎ 次回予告:いよいよ最終回!「ごきげんな自分」を育てる習慣
さて、これであなたは、
感情の原因を探り(第1回)、
パターンを可視化し(第2回)、
そしてネガティブな感情を手放す(第3回)方法
を学びました。
いよいよ次回は、このシリーズの最終回です。
第4回【変換する】では、
ただ不機嫌にならないように「守る」だけでなく、積極的に「ごきげんな状態」を自分で創り出していくための、具体的なアクションプランについてお伝えします。
ぜひ楽しみにお待ちください。
【全4回】もう感情の波に飲まれない!自分の「機嫌」の取り方レッスン
- 第1回:【原因を知る】 なぜか「心がザワつく」あなたへ。内観で不安の根本原因を探る方法
- 第2回:【可視化する】 感情の波に飲まれない!心の天気予報「感情ログ」のつけ方
- 第3回:【手放す】 感情のデトックス!ストレスを洗い流す「感情ジャーナリング」のすすめ (←イマココ)
- 第4回:【変換する】 心が軽くなる!自己対話でネガティブな感情をポジティブに変える方法
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